DDDefense DeskWordPress 緊急対応
技術資料

いまのバックアップが復旧に使えるか、事故の前に確かめられる範囲

自動バックアップが動いているかどうかと、そこから元に戻せるかどうかは別の話です。事故の前に自分で確かめられるのは、提供元が公表している対象の範囲と、ファイルとデータベースを手元へ取り出せるかです。取り出したものが揃っているかは、別の環境へ戻して確かめる形になります。別の環境を用意できない場合に、何が確かめられずに残るのかを判断できます。

公開日 2026.08.15読了目安 6分著者 DD Defense Desk

「取れている」と「戻せる」は別のこと

管理画面にバックアップの一覧が出ていても、そこから元の状態へ戻せるとは限りません。戻すには、ファイルとデータベースの両方が要ります。WordPress公式ドキュメントは、典型的なWordPressサイトを完全に復元するには両方のバックアップが必要だと書いています(原文は typical と限定しています)。

同じ文書は、自動バックアップについて、処理が機能していることを確認するために、ときどき別途手動のバックアップを取ることを強く推奨しています。推奨されているのは処理が動いているかの確認であって、復元そのものを試すことではありません。実際に戻せるかまでを事故の前に確かめる方法は、この資料の範囲には書かれていません。

戻す時点で何が消えるか、どの時点へ戻すかは、事故が起きたあとの判断になります。改ざん後にバックアップへ戻してよいかの判断材料は別に整理しています。

対象の範囲は、提供元の記述で確かめる

自動バックアップには、対象にならないデータや条件があります。エックスサーバーは、対象外となる例として、キャッシュのディレクトリ配下、debug.log、メール関連のディレクトリ、セッションの保存先、1,000テーブルを超えるデータベース、破損や高負荷でバックアップ処理を行えないデータベースなどを挙げています。ファイル数が非常に多いといった事由で、アカウント単位で対象外になる場合もあるとしています。挙げられているのは例であり、対象外の全一覧ではありません。

同社は「データの確実な保全を保証するものではありませんので、お客様ご自身でもデータのバックアップを行うことを強くお奨めいたします」と書いています。提供元自身が、自動バックアップだけに頼らないよう求めています。

上限のかかり方も事業者で違います。さくらインターネットの「バックアップ&ステージング」(外部サイト)は、バックアップ数が最大8、容量の上限が1バックアップにつきレンタルサーバシリーズで60GB、データベースで1GBです。対象は「www直下のWEBコンテンツ」で、それ以外は対象外とされています。同社も「お客様の環境によってはすべてバックアップできない場合がございます」と記載しています。

確かめるのは、契約している事業者の記述です。他社の条件は当てはまりません。

手元へ取り出せるかは、事業者と容量で変わる

保管されていても、手元へ取り出せなければ、必要になったときに自社だけでは回収できません。取り出せるかどうかは、契約している事業者の機能と、データの大きさで決まります。

データベースについては、エックスサーバーのサーバーパネルから手動のバックアップをダウンロードできる(外部サイト)としています。ただし「データベース1個の容量が目安値(MySQLバージョンにかかわらず5GB)を超えている場合、ダウンロードできません」とあり、目安値を下回っていても多量のレコードがある場合は失敗することがあると書かれています。この資料が支えるのはデータベースだけで、ファイルの回収は支えません。

ファイルについては、cPanel(ホスティング事業者が提供するサーバーの管理画面の一種)を使うホスティングなら、File Manager から選んだファイルのダウンロードや、フォルダをまとめて圧縮する操作(外部サイト)があります。ただし同じ文書は、File Manager を提供元が有効にも無効にもできると書いています。

さくらのレンタルサーバのファイルマネージャー(外部サイト)でも、圧縮形式を指定してダウンロードできます。どの事業者でもできるとは限りません。契約している事業者の資料で確かめてください。

確かめること分かること分からないこと
契約している事業者の対象範囲の記述何が対象外か(提供元が例として挙げた分)挙げられていないものが対象かどうか
データベースを手元へ落とせるか容量や件数の条件に当たっていないか落としたものから戻せるかどうか
ファイルを手元へ落とせるかその画面が使える状態か落とせる範囲がサイト全体を含むか

WordPressの標準機能で持ち出せる範囲

サーバーの管理画面を使えない場合でも、WordPressの管理画面に入れるなら、標準のエクスポート機能があります。公式文書は、作られるWXRファイル(WordPressの投稿などを書き出すXML形式のファイル)に投稿、固定ページ、カスタム投稿タイプ、コメント、カスタムフィールド、カテゴリー、タグ、カスタムタクソノミー、利用者が含まれると説明しています。

この資料は、テーマ・プラグイン・サイト設定・アップロードしたファイル本体が含まれるかどうかを書いていません。含まれないと判断するには別の資料が要ります。エクスポートしたファイルだけを保管して安心しないでください。

つまり、WordPressの管理画面から取り出せるものと、サイトを戻すのに要るものは一致しません。

事故の前に決めておけること

確かめた結果として決められるのは、次の3つです。過ぎた時点のコピーは、あとから作れません。 自動バックアップの対象外だった範囲について、その時点の状態を後から取ることはできない、という意味です。いま残っているデータを別に取ることは、気づいた時点でできます。

  • 保管先を分けるかどうか:WordPress公式ドキュメントは、少なくとも直近3〜5個のバックアップを保持し、そのコピーをホスティングサーバー、クラウドストレージ、手元のPCなど異なる場所に保管することを推奨している。さくらインターネットは、契約サービスが廃止されるとバックアップも削除されるとしている。同じ扱いかどうかは、契約している事業者の記述で確かめる。
  • 対象外の部分をどうするか:対象外だと分かった範囲は、自動バックアップでは埋まらない。別に取るか、失っても再現できる状態にしておくかを決める。
  • 取り出せない条件に当たっていないか:データベースの容量やレコード数が条件に当たっているなら、いま気づける。事故のあとに気づくと、取り出す手段を探すところから始まる。

確かめても残ること

ここまでで確かめられるのは、提供元が公表している対象の範囲と、手元へ取り出せるかです。取り出したものが揃っているか、そこから実際に元の状態へ戻せるかは、戻して確かめる作業になります。

確かめる手段があるとすれば、別の環境へ戻して中を見る形です。本番へ戻して確かめるのは別の話になります。失敗したときに元へ戻せるかは、使っている仕組みと手順によって変わるので、試す前に確かめてください。

別の環境を用意できるかどうかは、まず契約している事業者の資料で確かめられます。さくらインターネットは、公開領域に影響を与えずに検証できるステージング環境を、対象プランと数・容量の上限つきで示しています。資料で決まらない部分(公開環境との構成の差、取り込める範囲)は、相談相手と条件を詰めることになります。

相談相手に確認すること

制作会社やサーバー会社へ聞くときは、次を聞くと、公表されている条件のどこが足りないかを絞れます。戻して試せる環境があるかも、あわせて聞いてください。

  • 対象外になっている範囲:契約しているプランで、何がバックアップの対象外か。提供元の記述のどこに書かれているか。
  • 保持されている個数と期間:いくつ残るか、いつまで遡れるか。上限を超えたときに何が消えるか。
  • 手元へ取り出す手段:ファイルとデータベースを、それぞれどの操作で取り出せるか。取り出せない条件があるか。
  • 戻すときに要る作業:戻す作業を誰が行うか。公開を止める必要があるか。戻す前に中を確認できるか。

参考情報(外部サイト)

本文で参照した外部の公開情報です。

確かめた結果で、次に決めることが変わる

対象外の範囲が広いと分かったなら、次に決めるのは自動バックアップを増やすことではなく、対象外の部分を別に取るかどうかです。取り出す手段が無いと分かったなら、決めるのは別の取得手段があるかどうかです。保管先を分けるかどうかは、取り出せるかの確認と並行して決められます。提供元のバックアップを取り出せなくても、別の方法で自社側にコピーを持つ判断はできます。

確かめた結果で決まるのは、足す順番です。保管先を分けること自体は、対象範囲を調べ終える前でも決められます。WordPress公式が異なる場所への保管を推奨しているためです。一方、対象外の分をどう埋めるかと、戻して試せる環境が要るかどうかは、何が対象外で何を取り出せるかが分かってからでないと決まりません。

Next

WordPressの更新を追っていても危険が残るようになった理由

更新を追う運用で守れる範囲を確認する →

← コラム一覧へ戻る

緊急: 当日中初動